「スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険」を読んで
【スマホ時代の哲学を読んだ感想】
iPhoneが日本に上陸してからわずか15年。今や私たちの生活になくてはならないものになったスマートフォン。
これがあることで離れた場所にいる人と連絡が取りやすくなったり、気軽にインターネットにアクセスできるようになった一方、
ついつい手持ち無沙汰なときにスマホを開いてしまいます。
すぐにポッケにしまってすべきこと、したいことに切り替えられるうちはいいのですが、その回数を重ねるうちに用もないのにスマホをいじる時間が増えていってトイレや風呂にまで持っていってしまう始末。
私にもそういう時期がありました。そんなときふと画面に表示されたのがこの「スマホ時代の哲学」という本。
スマホばかり見ている人に対して上からもの言うタイプの本かなーと思いつつ気になってkindleのサンプルをダウンロードし、読み進めていくと
全然そんな感じはせず、むしろ著者の谷川さんも"こっち側の人間"のような感じがした。
谷川さんは"こっち側の人間"としてスマホを扱う現代人を哲学的に、心理的に分析し、そのうえでどういう意識でスマホやこの時代と向き合えばいいのか、
あるいはこのスマホ時代において人が大切にすべきことは何かを記してくれている。
現代社会はネットで調べればすぐに知りたいことが出てくるし、昔のようにいろいろな人と対面でお互いに支えあいながら暮らしているというよりは、
ネット環境さえあれば大抵のことはできるし、家から全く出なくても物理的に生きていけるような仕組みも作れるし、社会はポジティブ礼賛の空気が漂っているようにも感じる。(就活なんかはとくにそうだ)
だが、それら現代社会で"暗黙に"重視されているようなことは片面にすぎない。いや片面以下かもしれない。そんなことを本書は示してくれているような気がする。
そんな本書の中でも重要なキーワードが"ネガティブケイパビリティ"である。
これはどういうものかというと、「わからなさ」とか「モヤモヤした気持ち」の状態でいられる能力といえる。
例えば、今日友達と会話した中で、友達が言ったことを理解できなかったなぁとか。長い付き合いで気の合う友達でなければ、こういうことは割とよくあると思う。
こういった「よくわからなかったなぁ」という気持ちを抱えるというのは実は大切だし、今の時代難しくなってきてるのではないかと思う。
僕自身この本を読むまではそういうことが煩わしくてすぐ答えを求めてしまうタイプだったので、この本と出合えてよかったと思う。蜂に刺されるようなことは書いてあったけど。たまにはそういう本を読むのもいいし、この本は蜂で刺してきつつも著者がしっかり寄り添ってもくれている本なのでオススメです。
【オススメの関連本】
この本に興味を持った方はこちらの本もオススメです!
・谷川嘉浩著 「ネガティヴ・ケイパビリティで生きる 答えを急がず立ち止まる力」
→"ネガティブケイパビリティ"に興味があればこちら!同じ谷川さんが著した本です!
・帚木蓬生著 「ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力 (朝日選書)」
・枝廣淳子著 「答えを急がない勇気 ネガティブ・ケイパビリティのススメ」
100de名著 スピノザ「エチカ」
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【スピノザ】
【ユダヤ教会から破門された後、「エチカ」の執筆は始まった】
【「エチカ」は最初から順に読んではいけない!?】
「エチカ」という本は、(中略)まるで数学の本のように、最初に用語の「定義」が示され、次に論述のルールを定める「公理」が来て、それからいくつもの「定理」とその「証明」がひたすら続き (本書より)
【ぱらぱらめくって気になる定理があったらそこを読めばいい】
【さいごに】
【オススメの関連本】
・國分功一朗著 「はじめてのスピノザ 自由へのエチカ」 講談社現代新書
・國分功一朗著 「スピノザ――読む人の肖像」 岩波新書
・工藤喜作著 「人と思想 58 スピノザ」 清水書院
・上野修著、鈴木泉著 「第III巻 エチカ (スピノザ全集)」岩波書店